現在、当社グループの長期ビジョンである「全てのステークホルダーの幸せ向上」実現に向け、「2019中期5ヵ年経営計画」を推進しております。その根幹を成す“人的資本”の価値向上のための4つのプロジェクトについて、各プロジェクトのリーダーが進捗と展望を語り合いました。
※2021年10月時点でのインタビュー内容です。
※プロジェクト(以下、PJT)A、B、Cは2019年4月に、Dは2021年4月に発足いたしました。
企業ブランディングと認知度向上
草野:
PJT Aの目的は優秀な人財を採用するための企業ブランディングと認知度向上です。ITツールを活用した生産性向上はもちろん重要ですが、当社の仕事は、高い技術力と提案力を要する「人にしかできない」所が大きいため、継続的に人財を確保する必要があります。会社全体として採用強化に取り組むため、PJTを発足いたしました。
直近の施策としては「①当社として初のTVCMを制作・放送」、「②ビジネスカジュアルの導入」を実施いたしました。
小川:
就活生の反響はどうですか。
草野:
TVCMは愛知・岐阜・三重のローカル放送のため、効果は限定的ですが、面接で学生から「CMを見た」という声を聞けています。今後は全国規模でのCMも視野に入れ、更に認知度向上に注力していきたいです。
ビジネスカジュアルについては、学生が就職先を選ぶ際のひとつのポイントになっているようです。また、社内の雰囲気向上・生産性向上のために導入しました。社内への浸透のために、まずは経営層自らが、率先してカジュアルな服装をして雰囲気づくりに取り組んでほしいと思います。
従業員満足度向上のための制度改革
諏訪:
PJT Bは、PJT Aと密接に関係しています。優秀な人財を採用し、当社で長く活躍してもらうためには、安心感・満足感を得ながら、やりがいを持って生き生きと働ける環境を整えることが重要です。
従来も、ベースアップや各種手当の部分改定等は行ってきましたが、この度、従業員エンゲージメントをより一層高めるために、人事制度「等級」「評価」「報酬」を抜本的に見直すことにしました。
ワークライフバランスの実現
平山:
PJT Cでは、ITツールを活用した生産性向上に取り組んでいます。長年の課題である残業時間削減のために、各種点検表、帳票、記録写真等の作成を、ITツールを使って効率化することを目的としています。
現在、一部の部門で3種類のアプリを試験導入し、効果を検証・情報収集しながら、従業員へのアプリ勉強会を実施しているところです。
草野:
ITツールの導入による実績はどうですか。
平山:
導入の実績として、とある部門で、作業時間を20%程度削減することができました。
若い方は順応が早く使いこなせています。年齢層の高い方からは「手で書いた方が早い」という声も出ていますが、アプリの勉強会を通じて徐々に慣れていただけたらと思っています。
体系的教育による技術力の向上
小川:
PJT Dでは、全国の従業員が1ヵ所に集まり、病院・工場等の実際の現場にある設備に近いものを用いて、技術力の研鑽ができる大規模な研修センターの開設に取り組んでいます。
現在、東京・名古屋・大阪・九州の拠点に研修設備がありますが、名古屋・九州は設備が古く、現場の実態に合わなくなってきました。
また、現在の新入社員研修には長年の課題があり、その解消のために、研修センターを開設することにいたしました。
平山:
現在の新入社員研修の課題とは?
小川:
約1週間の日程で実施し、その後は各現場に配属され、先輩社員がインストラクタとなりOJTによる技術教育をしていますが、インストラクターによって教える内容・質に差異が出てしまう点と、現場に大きな負担が掛かるという点が長年の課題でした。
新入社員が、基礎的な技術力を身に付けた上で現場へ配属されるよう、研修内容を見直しています。研修センターでの新入社員研修は、ある程度の期間(例えば3ヵ月間)をもって実施し、技術・知識の質を担保できるようにします。
現場へ配属された際、スムーズに実務に臨めるよう、また、現場の負担を軽減できるよう、研修プログラムを考えています。
諏訪:
新入社員だけでなく、全従業員が、研修センターでスキルアップできる安心感と、現場で技術力を存分に発揮し、お客様から感謝される充実感も得られれば、組織全体のモチベーション向上にも繋がりますね。
平山:
作業効率化のITツールの研修も、研修センターでぜひ実施していきたいです。
草野:
今後更に力を入れていく事業(バリデーション[※1]サポート、自家消費型太陽光発電[※2]事業等)に関わる研修も、強化が必要ですね。
[※1 バリデーション…医薬品等製造の設備・工程・方法等が最適な条件であることを科学的に検証・保証すること。]
[※2 自家消費型太陽光発電…工場等の施設に太陽光パネルを設置することで、事業等で消費する電力の一部を太陽光発電によって賄うシステム。]
小川:
はい。当社事業は取り扱う機器や作業内容が多岐に渡る面が特徴的なので、研修プログラムや内容は、都度アップデートできるようにしていきたいです。
技術力と同時に、安全意識を高める研修も重要です。VR等を取り入れ、体感型の研修ができるセンターにしたいと思っています。
あとは講師ですが、現在の研修は現場社員に、仕事の合間を縫って研修講師をしてもらっています。今後、専任の研修講師チームを作り、研修のレベルを上げて会社全体の技術力の底上げができればと考えています。
平山:
研修センターはいつ頃開所予定ですか。
小川:
2022年度中の開所を目指しています。現在、全国拠点のPJTメンバーに意見を伺いながら研修計画(ソフト面)を立案しています。そちらが固まり次第、実際に必要な設備・建物(ハード面)の準備を進めます。
プロジェクトを進めている中での課題
草野:
当社のビジネスモデルはBtoBであるため、学生の認知度を上げるためにはどのようなPRをするか課題です。
手段としては、TVCMや大学訪問といった地道な努力を続けていくしかありません。昨年からコロナ禍で対面による合同説明会もできず、Webでの説明会を実施していますが、やはりWebではリアルの対話に劣ります。
また、スーツを着て仕事をする職種に惹かれる学生も多く、技術職のかっこよさ・魅力をもっと訴求していかなければなりません。当社の採用Webサイト等での情報発信に力を入れ、コロナ禍の状況次第ですが、インターンシップも充実させていきたいです。
平山:
アプリ導入は、費用対効果と従業員のITスキルが課題となります。全国の従業員に地道に勉強会を実施し、使い方を少しずつ理解してもらうしかありません。
小川:
お客様の施設毎で作成する書類の書式も違いますから、使うアプリもお客様のニーズに合うものを選ばないといけませんね。
その点でも、ITツールについて研修センターで学べるようにする必要がありますね。新入社員は入社時からツールの使い方を勉強できるよう、体制を作りたいです。
平山:
あとは、点検表等でExcel[※3]を使うことが多いので、Excelの機能をもっと活用し効率化できるような研修も、アプリの研修と一緒に実施したいですね。
[※3 Excelは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。]
諏訪:
新人事制度の方は、概要構築は完了しており、2022年度から導入いたします。従来制度からの大改定になるため、最初は少なからず反発等もあるでしょう。改定目的をきちんと周知し、理解してもらうことが新制度導入の第一歩であると認識しています。
また、導入して終わりではなく、実際に運用・定着させることが肝要なため、従業員の声等を聞きながら柔軟に対応していきます。
複線型人事制度の導入
諏訪:
従来制度は、管理職になるキャリアパスのみの“単線型”でしたが、新制度は技術のエキスパートとして専門性を発揮できる「プロフェッショナル職」を新設し、“複線型”人事制度とします。
技術力が売りの会社として、お客様に高品質サービスを提供し続ける体制の構築を目的としています。これにより、「管理職になるよりも、現場で更に専門性を磨いていきたい」、「技術分野に特化したい」という従業員が、その能力・適性を活かしてキャリア形成ができるようになります。
小川:
現場仕事が好きな人はいますからね。新制度によってそういった従業員が、より働きがいを感じながら仕事ができるようになりますね。
外国人、女性の活躍推進、ダイバーシティ
草野:
当社はグループ会社が海外にもあるため、海外の優秀な方も採用していきたいです。海外の方に、当社の高品質なサービスを学んでもらい、海外拠点で活躍していただくことで、国内外の発展への寄与になります。
アフターコロナ時代に向けて、海外での採用活動に取り組みたいです。また、女性の活躍も推進したいです。
平山:
現場で女性が活躍するにはどのようなハードルがあるでしょうか。
草野:
技術職は男性社会と思われがちですが、病院の現場(FM[※4]職)では女性しか入れない場所があり、女性が活躍する場が多いです。
今後の施策として、更衣室を設置する等、女性向けの現場環境の整備や、女性技術者を多数配置したチームをつくる等の工夫で、女性が活躍できる環境を当社で整えていきたいです。
建物設備メンテナンス業が性別・世代を問わず働ける魅力的な仕事になるよう当社として取り組んでいきたいです。
[※4 FM…Facility Managementの略称。メンテナンスサービスと日常の維持管理を合理的に組み合わせた統括マネジメント。]
諏訪:
ダイバーシティへは今後、シニア世代の活用も含め、積極的に取り組んでいかなければなりません。最近の学生はSDGsについて学校で学んでおり、企業のSDGsに対する姿勢が就職先選択の基準のひとつにもなっていますね。
小川:
そうですね。当社は創業時から「環境創生企業」として、建物設備メンテナンスを通じて環境負荷の低減、省エネルギー推進に貢献している企業です。
当社の存在意義をもっと効果的に学生にPRできれば、良い人財が集まると思います。
諏訪:
魅力的な会社になるためには、もちろん報酬面も大事ですが、働きがいや仕事の楽しさを感じてもらえる労働環境をつくることが重要と考えています。
当社の仕事は「縁の下の力持ち」として大規模な建物のバックヤードで働く地味な仕事ですが、病院や工場等が最適な環境で日々稼働できるようにする、世の中になくてはならない仕事です。その魅力を伝えたいですね。
2022年度の見通しと抱負
平山:
2022年度は、現場毎で、お客様のニーズにマッチしたITツールを選択してもらい、全社的に導入していきます。アプリがどれほど作業効率化に寄与できるのか、引き続きモニタリングしていきます。
ITツールをたくさん使えば良いというわけではないので、現在試用している3種類のアプリのうち、どれかを選択してもらい、現場の従業員が使いこなせるようにしていきます。
ITツールの勉強会を実施しながら「使用して良かった」という口コミを社内で広げていきたいです。
小川:
今年度中に研修プログラムを整備し、2022年度中に設備面を整えて研修センターを開所する予定です。そして、2023年4月入社の新入社員研修で本格的に活用できるようにしたいです。
「オンライン研修」と「リアル研修」それぞれの良さを併用することで、より密度の高い習熟ができると考えています。例えば、研修動画を撮影、いつでも自由に視聴できるようにし、動画で予習した上で研修センターの実機で研修をすれば、研修の効率化・習熟度向上に繋がります。
草野:
全国の支店・部門を横断して採用活動をする専任の採用チームを発足できれば良いと思っています。また、研修センターが完成したら、学生向けの見学会・インターンシップにも活用し、当社の仕事に興味を持ってもらえるようにしたいです。
PR手法としては、TVCMの全国展開や、Webサイトの充実を図ってまいります。
諏訪:
2022年度からは新人事制度の運用が始まります。現在進行中の「2019中期5カ年経営計画」のKPIでは、2024年までに従業員満足度70%、2029年までに80%とする目標を掲げています。(2021年3月時点69.3%/下グラフ)
目標の実現に向けて、引き続き、従業員の声に耳を傾けながら組織改革に取り組んでまいります。
草野:
プロジェクトの共通目標は「人的資本の価値向上による持続的な企業価値向上」ですからね。
従業員エンゲージメントに全社的に取り組み、従業員満足度を高めることで、お客様へのサービス向上、そして当社グループ全体の企業価値向上に繋げていまいります。皆様には、当社の今後の取り組みに引き続きご注目していただきたいと思います。
※掲載内容は2021年10月取材時点のものです。今後の経済情勢・社会情勢等、様々な要素により、内容が一部変更となる可能性があることをご承知おきください。